原発処理の長期化が予想されるようになってから、累積放射線量やSpeediの情報が報道されるようになりました。
しかし、新聞報道でさえも取材深度が浅い記事も散見されるようです。
福島市民が深い関心をもつ下記の記事と、専門家のやりとりについて記します。
毎日新聞(3/23掲載)の記事
東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発からの放射性物質の漏えいにより、福島県内を中心に大気中の放射線量が高い状態が続いている。福島県や文部科学省の測定値を毎日新聞が積算したところ、同原発の北西約65キロの福島市では14~21日の間に、日本人が1年間に浴びる自然放射線量(平均1500マイクロシーベルト)を上回る1770.7マイクロシーベルトに達した。政府は「直ちに健康には影響しない」としているが、原発事故の収束が遅れれば、「新たな手立てが必要」との指摘もある。【須田桃子、下桐実雅子、神保圭作】
全文はこちらから。
http://mainichi.jp/select/science/news/20110323k0000m040075000c.html
この記事に対するやりとりです。
皆様
今朝の毎日新聞の記事はひどいものでした。
福島市民に大きな不安を与えてしまったでしょう。
以下、毎日新聞社とのやりとりです。
またこの情報を皆様のネットワークでたくさんの知人の方にお伝えください。
新聞社も学者も無責任すぎます。
社会情勢が不安定になったほうが、記事が面白くなるとでも考えているのでしょうか。
怒りがとまりません。
東北を救うため、是非、お力をお貸しください。
私の研究室のHPもアップデートしました。
川島
●●●さん
本日の毎日新聞に書かれていた「ただちに健康の被害」に 関する琉球大名誉教授のコメントはひどいものでした。
何故、きちんとした放射線生物学の若手研究者に取材をしないのですか?
平時ならともかく、社会不安をあおり 風評被害を広げる役割を新聞が担うというのはどういった了見でしょうか?
御社の態度に大きな疑問が生じました。
健康の被害があると主張したいのであれば、どのような被害がどのような確率で現れるのかを根拠を持って示すべきです。
タバコによる健康被害のようにきちんとした疫学調査に基づくものではなく、明確な根拠がないことを何故きちんと伝えないのですか?
非常にがっかりしました。
川島
川島さん
毎日新聞社の一員として、お詫びします。
非常に恥ずかしく思っています。
川島さんのご指摘はもちろん、ほかにも下記の問題があります。
(1)1770マイクロSVは屋外での積算線量であって、実際には多くの人は
200マイクロSV程度の被ばくであること
(2)福島県内の放射線量は、ほぼ放射性ヨウ素の減少曲線と同じように減少し
ている(たぶん、多くが放射性ヨウ素131です)から、今後の積算線量
はそれほど増えないであろうことを無視している
(3)イランやブラジルで自然放射線が1万マイクロSVの地域があると書きなが
ら、そこの発がん率は他地域と違いがないということを書いていないなどなど
です。
この間、冷静な記事を書こうと社内で訴えてきて、少し改善されたかと思っていまし
たが、甘かったと反省しています。
なお、編集局長に以下の点を知らせておきました。ご参考までに。
【福島の放射線量についての評価】
福島市の放射線量(飯館などほかの地域でも基本的に同じです)は、16日に最高値を
記録した後、一貫して減少しています。その減少曲線は、放射性ヨウ素(ヨウ素131、
半減期8日)の減少曲線とほぼ同じで、1週間で半減しています。
これの意味することは、以下の2点です。
(1)各地に飛来した放射性物質の多くは放射性ヨウ素であること
(もしも、半減期2年のセシウム134や半減期30年のセシウム137が主体
なら、減少曲線はなだらかになります)
(2)最後の爆発・火災(15日)以降、新たな放射性物質の飛来は少ないこと
(もしも、かなり飛来しているなら、減少曲線はなだらかになります)
ここから言えることは、以下の点です。
(1)今後、爆発・火災がなければ、放射線量は8日後には、今の福島市=6マイクロ
シーベルトから3マイクロシーベルト程度になります。
被ばく量はかなり減っていきます。
(2)現在は原乳や野菜から暫定規制値を超える数値を示していますが、これは主に
15日までの爆発・火災により飛来した放射性物質に起因しています。
今後、爆発・火災がなければ、比較的早期に規制値以下のレベルになります
●●●
室屋義秀
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