2011年1月30日日曜日

Road to Italy/その1 準備スタート

こんにちは。

しばらくぶりの更新となりました。
というのも、先週は東京など各所を飛びまわっていました。

なぜか?
それは、今年レッドブルエアレースが休止という事で大きなチャンスだからです。
レースが無いために、9月にイタリアで開催される「WAC」World Aerobatic Championshipに挑戦出来るからです。
レッドブルエアレースの参戦に向けてのトレーニング中は、このようなアクロバット飛行訓練を長く行ってきました。

この大会、各国の選手は国や管轄団体のサポートを受けて出場してきます。
強豪国は、機体・コーチ・サポート体制など段違いに充実しています。
日本チーム(まだ私一人ですが)には不利な状況であるのは明白でした。
そこで、2003年の初参戦から、何とか勝つための環境作りための準備を細々と行ってきました。

1.練習環境
ホームベースふくしまスカイパークで常時訓練が行えるように、様々な周辺活動を行ってきました。飛行場の指定管理者となり、飛行場の活性化、地域との共生など。
現在では、地元から理解をいただき練習させていただいています。

2.技術習得
優秀なコーチに指導を受ける事が出来るかが、重要なカギとなります。
ユルギス・カイリス氏、パトリック・パリス氏、ニコライ・ティモフエフ氏などトップパイロット/コーチとの人脈を築いてきました。

3.機体
国内のエアショー活動用の機体とは別に、選手権で使用可能な機体を調達する事を目指してきました。
今回は、レース機エッジ540をアクロバット仕様に改造し参戦予定です。


4.日本チーム体制
訓練は、レベルの似通った複数名で行うのが効果的です。
ライバル心、意見交換、助け合いなどのキャンパス効果と呼ばれる状況が生まれるからです。
国内においてこの状況を作り出すために、複座機の導入サポートから、国内競技会の実施など時間をかけて準備活動をしてきました。
その結果、2009年の試行競技会を経て、ついに昨年第一回全日本曲技飛行競技会が開催される事となり、今年は中級クラス(インターミディエート)まで開催されるなど一気にレベルアップしてきました。
徐々に私のお尻に火がついてきました!
 この大会の成功は、日本操縦士協会などの公的団体の諸先輩の力添えが最大の要因です。
本格的に「日本チーム」としての機能が備わりはじめました。

5.資金
大会参戦には、やはり資金が必要です。
今後日本チームが強豪国と常時わたり会えるためのシステム作りが重要です。
先週は、この趣旨に賛同いただける方を探して走り回っていました。
ここは、まだまだ努力が必要です。


こうして見てみると、2003年の参戦時とは比較にならないほどいい環境です。
以前より多くの方々に理解いただき、支援していただいているおかげさまです。
しかし、今後5年程度で強豪国入りするには、まだまだ取り組む課題がたくさんあります!


私自身も、心・技・体の全てを充実させるべく取り組んでいきます。



レッドブルエアレースのシリーズ最終話公開中です。



つづく。

室屋義秀(44668/よしむろや)
レッドブル・エアレース #31  

2011年1月22日土曜日

操縦士道/その8 勉強

こんにちは。

早速、その7の続きから。

サッカーの話ばかり書いてきましたが、高校生活の最終話にチョッと勉強の話でも書きます。

勉強への意欲は、入試で燃え尽きた感で始まった高校生活。
勉強への興味は薄く、受験時のような集中力は続きません。

受験が終了してから一切勉強をしないで迎えた最初の中間試験。
なんと300人中、297位の成績。
やはり入試合格は奇跡だったらしく、まったくついていけません。
その後は進級すら怪しくなり、職員室に呼び出される毎日。
最後は、小説「羅生門」を原稿用紙に書取り(小学生か!って感じですよね?)などで、なんとか進級する始末です。

この高校、3年間の総合成績で上位80%の生徒は推薦で大学へ行けるのですが、早くも完全に圏外です。
しかし第4話で考えたように、パイロットになるには大学に進学したほうが有利だとわかっています。
今回は少し早い段階で、「やっぱり最低限は頑張るしかない」という事に気付き、少し勉強をするようになりました。

結果、超ギリギリで推薦を得て大学に進む事になるのでした。


人生の運気は、波のように常に上下しているようです。

中学時代には、意識下では波に気づくことができず、「モヤモヤ」という形で気づきました。
しかし高校生にもなると多少は成長し、いつの間にか重要な「タイミング」に気づくようになりました。

受験でまさかの合格を得て、高校入学時は波に乗って上昇中だと誤解していました。
受験が終わった時には、すでに下降が始まっていたのです。
それに気付かずに天狗になって波のボトムまで再び落ちていきました。
このような痛い目に遭った経験をいかに生かしていけるかどうかが、人生を切り開くターニングポイントになるのかもしれません。

本当の正念場は、波のボトムにあるときにいかに過ごすかなのでしょう。
ボトム時の「羅生門」の書取りのおかげで、文章の面白さに触れ、それまで苦痛だった読書が楽しくなってきました。そして勉強も楽しくなり始めました。

人生何が幸いするか、わかったものじゃありませんね。


                  つづく。


                   室屋義秀(44668/よしむろや)
                   レッドブル・エアレース #31  

2011年1月17日月曜日

操縦士道/その7 高校サッカー最終戦

こんにちは。
さっそく前回の続きから。

高校2年生の後半になると、上級生もいなくなり「天下」が訪れます。
練習の主導権も自分たちが握り下級生にはやりたい放題です。(笑)
みんな、根性トレーニングはあまり効果が無いことを実感しつつも、自分たちの味わった苦痛を後輩に伝承する「楽しみ?」はやめられないようです。

我々が多くの疑問を抱くようになり、効果的なトレーニングについて議論をするようになりました。
しかし、実際にはどうしていいかわからないので、なかなか改善されないまま3年生の夏に行われる最終戦に向けて焦りが募ってきます。

そのみんなの強い思いが「念」となって現実になる出来事が起こりました。
3年生になると、日本体育大学を卒業したばかりの現役選手が教員として配属され、サッカー部顧問になる事に!
私立高校の教員は基本的に異動がないため、新任教師しかも現役選手などというのは、200年に一度の奇跡なのです。

えっ、「念」なんて関係無い?偶然だ!
まあ、そうかもしれません。でも奇跡だと思って喜ぶと次の奇跡を呼び込む感じがしますが。
トレーニング内容は一変しました。
当然厳しいトレーニング内容でしたが、はじめて味わう本格的なもの。
みんなの技術が一気に向上していきます。
今までの根性トレーニングが馬鹿らしくなります。
(今となっては、この時期の根性トレーニングも大いに意義があると思いますが・・)


そして迎えた最終戦。

(写真はイメージです)




三回戦まで進み敗退。


この程度の弱小チームでしたが、目標としていたレギュラーで終了。
8年のサッカー経験から、自分には才能が無い事ははっきりしました。
しかし、結果はさておき、経過の目標としては十分に満足していました。
そして、やり遂げた事で中学時代のトラウマを克服できた事が、その後の人生に大きな影響をもたらしていきます。
自分の得意とするほんの一部の能力を楽しみながら伸ばしてあげることで、その他も引きずられるように伸びた結果でした。


そして新コーチからを迎えての経験から学んだ事。
トレーニングというものは、ハイレベルなコーチから正しくシステマチックに行うことで、その効果が数十倍になる事を実感させてもらいました。


これらの経験が、今後のパイロット人生に大きな影響を与えていくのでした。


                  つづく。


                   室屋義秀(むろやよしひで)
                   レッドブル・エアレース #31  

2011年1月14日金曜日

操縦士道/その6 再スタート

おはようございます。
今朝のふくしまスカイパークは、-5℃。完全に雪景色。
除雪車がほしいところです!




では、前回の続きから。


奇跡の高校受験も終わり、気ままな春休みを満喫したらいよいよ高校入学です。
入学するとさっそく、3年間何をするのか?という選択が迫ってきます。

二度とサッカーはしない、と決意した中学時代の暗い思い出がよぎります。
しかしサッカー以外に特に興味のあるスポーツも無く迷っていました。

迷っているとまたしても、あの「モヤモヤ」が頭にやってきます。
この正体に何となく気づいていたのか、15歳になって成長したのか、今回はどうしていくのがいいのか真剣に考えてみる事に。

このままサッカーをしないで、中学時代の苦い思い出を一生引きずっていくのか?
とても辛いが、再チャレンジしてトラウマを乗り越えていくか?
受験の奇跡を起こした「本性」を信じるか?

結果、やっぱりサッカー部へ入ることにしました。
まじめに、ひたむきにやれば必ず何とかやれる、という確信に近いイメージを得ていたのでしょう。

ちなみに当時はJリーグも無く、野球が圧倒的に人気で、モテスポーツではなかったのですが・・。(笑)


そこで中学時代の失敗を繰り返さないように作戦を立てます。
まだまだ低い身長をカバーしなければいけません。

身長は伸ばせないので、取り組んだのは貧弱な肉体の改造。
筋力はトレーニング次第で強化出来ます。
サッカーなので下半身を集中的に強化した結果、下半身ははかなり太くなり、キック力では一番となっていきました。
しかし、上半身との筋肉のバランスが悪くなり、短距離走はあまり速くならない結果に。

小学校時代の思い出から、「エースストライカー」にこだわっていたのですが、足がかなり速くないとつとまりません。
現在の自分の能力を自己分析して、「苦渋の」方針転換をはかることに。

強い脚力を生かせるディフェンスにつくことにしたのですが、これが幸いしました。
そこで配置されたサイドバックは、ウィングとも呼ばれ時にはフォワードをオーバーラップしてゴールへ向かう事もあり、非常に大きな面白みを発見したのです。

こうして、自分の能力を生かす場所を見つけ、面白みを発見出来てしまえばこちらのもの。
練習は決して楽ではないのですが、ひたすらに取り組んでいく事ができるようになっていきます。

そうして2年間が過ぎる頃には、いつの間にかあの「モヤモヤ」は消え去っていたのでした。

                   つづく。


                   室屋義秀(むろやよしひで)
                   レッドブル・エアレース #31  

2011年1月11日火曜日

操縦士道/その5 「モヤモヤ」の正体

こんにちは。
早速、前回の続きから。


非常に中途半端な状態で突入した受験勉強ですが、やはり身が入りません。
そこで今度は、「勉強をしすぎると目が悪くなる」という理由を思いつきます。
またしても名案(迷案)を思いつき、逃げ道を確保していきます。

でも、時々例の「女性教官との恋」のシーンが脳裏に浮かんできます。
その度に、どうしたら現実になるのか妄想を繰り返していました。

時間は常にペースを保ってヒタヒタと進みます。
 あっという間に、受験日がやってきました。

まずは東京の高校に比べ、受験日が2週間ほど早い千葉県の高校受験です。
まずは、確実に受かる滑り止めを受けて安心を確保する作戦。
手ごたえもあり合格間違いナシ、と確信していたのですが、まさかまさかの不合格。

またしても、「サボり」が手遅れ状態を招いてしまいました。
残るは、東京の難関高校のみ。
今までの成績を考えると合格率は、5%ぐらい。
残り2週間となった時点で、打てる手は少なく目の前は完全に真っ暗です。

自らがこの状況をうんでいる事にすら気づかずに、「採点間違えだ」という事でまたしても逃げ出します。
しかし、もはや残る逃げ道も僅か。
さすがに落ち込んで、絶望の淵で疲れ果てて眠りにおちました。

眠りに落ちた頭のなかで、女性教官が出てきました。
夢でのご対面はお初なのに、なんとバーでいい雰囲気になっていきます。




これは!と思ってドキドキしていると、なぜかそこに奇跡のゴールを決めたA君が登場。

A君は、あっと言う間に彼女を口説いて連れて行ってしまいました。



そこで、ハッと目を覚ました私は怒りにふるえています。
ヒーロの座に加えて、「彼女」まで連れ去るとは許せん!
 
でも、これが自らの行動を振り返る大きなきっかけとなりました。
A君との違いを考えてみると、身長や学力など大した差は無い気がします。
日々のつまらない事を、ひたすらに頑張ったか否かだけのような気がします。

そして、「日々の地道な努力は、奇跡を受け取る準備なのか? よくわからんが、どちらにしても努力が無ければ奇跡は絶対起こらない。」と気づくのです。
いや、とっくに気づいていたのです。そうです、何度も出てくる脳みその「モヤモヤ」です。
心の奥底で気づいていたのですが、それを認めると頑張らない理由がなくなります。
だから正体不明の「モヤモヤ」に形を変えて現れていたのでしょう。

その事に気づいた私の行動は大きく変わりました。
A君の奇跡のゴールをイメージしながら勉強に熱中します。
ドラゴンボールで言うところの、スーパーサイヤ人(古!)状態。

そして、2週間不眠不休で臨んだ最終試験。

奇跡の合格。

何と試験問題の半分近くが、直前に勉強した内容だったのです。



たった2週間の努力で、奇跡が起こりました。
自ら望む道がほんの少しでも見えた瞬間に、人の行動は大きく変わるようです。
きっかけは何でもいいようです。
チョット心に引っかかったものというのは、何かの暗示なのかもしれません。


人間には不思議な第六感があるのでしょうか?
この疑問については、また追っていきたいと思います。


                               つづく。

                   室屋義秀(むろやよしひで)
                   レッドブル・エアレース #31  

2011年1月7日金曜日

操縦士道/その4 奪われたヒーロー役

おはようございます。
今日は冷え込みが厳しく、福島は雪降りです。


では、前回の続き。

さて映画で盛り上がったものの、現実はそこにあります。
全く目立つ事の無い中学生にとって彼女をつくるなどという事は、夢のまた夢の先の妄想の果てにあり、とりあえずはサッカー生活です。

サッカーの部活に戻れば、相変わらずチビで補欠となり、すっかり腐っていた自分はそのままです。
当時、部活顧問の先生は大変熱心に指導してくれたのですが、元陸上選手。
サッカーの事などまるでわからない様子で、ひたすら走りまわされました。

当時、サッカー部には私、A君そしてB君と3人のチビがいましたが、全員レギュラー落ち。
サッカーのわからない先生が身長でレギュラー選びをしていると、3人ですねて愚痴を言い合っていました。

この様にして自らをガードする事で、自らが傷つきすぎないようにガードしていたのでしょう。
この様なケースは、大人の世界でも頻発しますが理論的に巧妙になっていくため、自らを振り返る事が難しくなり、かえって始末が悪くなるケースが多いような気がします。

ただこんな状況の中、A君だけは練習をひたすらに一生懸命つづけていました。
私とB君はすっかり腐り果て、身長や先生のせいにして逃げ続けました。


しかしトップガン以降、女性教官と恋に落ちるシーンが脳みそを駆け廻っています。
正体不明の妄想が、脳内に刺激を与え続けているからか、モヤモヤと何かしなければいけないような感じがします。
しかし、サッカーは頑張らない理由が見つかっているので、何か別な事ををすることにしました。
そこで思いついたのが、やはりトムクルーズに近づく事。
バイクは無理なので、代わりに自転車(ロードレーサー)に乗る事に決定。
部活の合間に、仲間とテントを担いでツーリングに行くなどして走り回り、一日100km走ることもありました。

この自転車は、色々と理由をこじつけて父に買ってもらいました。
不思議と何も言われる事も聞かれる事もなく、環境を与えてくれました。 
親とはそういう立ち位置にいるものなのかもしれません。


3年生の春になると、自転車の影響で体力がついたのか、部活が少し楽になってきました。
サッカーが、またほんの少しだけ楽しくなり始めたのですが、部活は夏の試合でおしまいです。
時すでに遅く、最終戦ではベンチから試合を見つめるだけの日々。
「今、選手で使ってくれれば絶対に活躍するのに、使ってくれない」と、ひたすらにベンチですねていると、フォワードの選手が試合中にまさかの負傷。
出番か??っとこんな時だけ都合良くドキドキしながら待っていると、まじめに練習を積んできたA君が起用されることに。



そして、試合終了直前に何とこぼれ球に頭から飛び込み、見事に得点。

一躍、ヒーローとして中学を卒業していきました。






(写真はイメージです。)

私はヒーロー役を奪われたと、さらに落ち込む一方。
不完全燃焼で部活を終了し、もう二度とサッカーなどしないと誓うのでした。


時間は常に流れていきます。部活が終了したら今度は受験です。
特に志望校があるわけでは無かったので、どうしたらパイロットになれるのかを調べてみました。
国内では、大卒で大手航空会社(JALなど)の自社養成や自衛隊、高校卒業で自衛隊、20歳以上で航空大学校、自分で免許を取得して写真撮影などの小型機のパイロットになるなどの道がある事がわかってきました。
とりあえず大学に行ける状態にするほうが、将来の選択肢が大きく広がるようだ、という曖昧な感じでしたが、とりあえず勉強に力を入れることにしました。

しかし勉強が好きではなかったので、いまいち身が入りません。
勉強しつつも映画のワンシーンが頭の中を駆け巡りモヤモヤしています。


しかし後日、このモヤモヤが行動指針を変える大きなきっかけとなる「気づき」を起こすのです。


                               つづく。


                   室屋義秀(むろやよしひで)

                   レッドブル・エアレース #31  

2011年1月4日火曜日

操縦士道/その3 女性教官との恋

こんにちは。

小学生でサッカーを始めクラブチームまで設立。
足も速かったので、エースストライカーとして活躍していました。
なので、中学に入っても当然のようにサッカーにあけくれていました。

しかし中学に入っても身長が伸びず、300人いる同級生の中で2番目の背の低さ・・・・。
体力的にも当たり負けするなどしているうちに、レギュラー落ち。やる気が失せていく中、練習は厳しくなる一方と、不平不満の日々を過ごしていました。

そんな中、高校受験も迫ってきます。これ幸いと、受験勉強を言い訳に部活の練習をサボる術を身につけました。
サッカーより勉強に興味があった訳がなく、逃避するための手段だったはずですが、自らも“仕方がない”と自分を弁護して責任を“受験“に押しつけて納得させていたようです。
何といっても受験という“大義“があるので、周りの人も文句は言いません。クラブのメンバーも諦め顔です。

っとまあ、こんな感じで中途半端に過ごしていた中学2年生の冬休み、映画「トップガン」が公開されました。

お小遣いを貯めて映画館に行き、カッコよさにシビレテ帰ってきました。
自転車に乗って横を走るトラックを見れば、滑走路の横をバイクで疾走するトムクルーズの気分です。(笑)

そんな中最も印象に残ったのが、トムクルーズが女性教官と恋に落ちるシーン。
これだ!やはりパイロットにならないとだめだ!と妄想力逞しい中学生の脳みそを刺激し、心の奥底にしまってあった空への思いが本格的に再燃するのでした。

しかしこの妄想が、6年後アメリカでまさかの現実を引き起こすとは!
 

                                つづく。

                   室屋義秀(むろやよしひで)
                   レッドブル・エアレース #31  

2011年1月1日土曜日

「ウルトラマンダッシュ」で明けましておめでとうございます。

明けましておめでとうございます。
今年も皆さまが楽しい一年を過ごせますようお祈りいたします!


日本テレビ「3分間で奇跡を起こせ!ウルトラマンDASH」、いかがでしたでしょうか?
この番組の制作にあたり、制作担当の皆様には大変お世話になりました。ありがとうございました。


このチャレンジ、企画の段階では、チョット難しいのでは???という感じでした。

というのも、飛行速度は約300kmで飛び、毎秒80m以上進みます。
そして、タイヤ幅は12cm。 ケーキのロウソク間の通過可能スペースは25cm。
車の運転感覚で言えば、左右のミラーから3cmぐらいしかない隙間を、全開で通過する感じというところでしょう。
さらに飛行機は上下に動きますのでこの動きの制御が至難の業です。
さらに、ふくしまスカイパークは山間の飛行場のため気流が安定しない事が多いのです。


しかし何とかしてこのミッションを成功させるため、作戦を練り上げる事にしました。

安全対策
まずは、万全の安全対策が取られなければ実施する事は出来ません。
そこでケーキ台の構造から強度テストなどを綿密に行いました。
タイヤが接触した場合には、全てがバラバラになって吹き飛ぶように設計。
破壊テストなどを実施して検証・確認を作業を慎重に行いました。


トレーニング
ミッション達成のためには、タイヤが通過する高度と横方向のずれの二つを同時に合わせなければいけません。
しかしコックピットからの視界はとても限られていて、タイヤはおろかケーキさえも200mほど手前で見えなくなるのです。
なので位置の調整は、全てパイロットの感覚が頼りとなります。

この感覚を正確に調整し研ぎ澄ますために、事前に自主トレーニングを実施。
地上に誘導員を配置し高度・左右のずれなどを確認しながら何度も微調整を行います。
結果、当初は上下50cm、左右100cmほどあったコントロール範囲が、上下10cm、左右10cmまで縮まり、可能性が見えてきました。


作戦
あとは本番でいかに確実にミッションを成功させるか?です。
ケーキ自体にあたるとバラバラになってしまうため、これを避けなければなりません。
そこでまずは上下の高さを合わせる作戦。
左右の位置を30cmほどずらして、高度が低い場合にもケーキに接触しないようにして、上下の間隔を合わせていきます。
上下の感覚がOKとなったところで、左右を合わせていきます。
誘導担当の長瀬智也さんの声を頼りに微細に調整をしていきました。
長瀬さんは本格的にモータースポーツをされているだけあり、すぐに要領を把握され助かりました。
そして最後は、調整不可能な気流の乱れによる揺れ(5cmぐらい)のマージンを取って5cm上を飛び、神風が吹いて当たるのを待ちます。

そして見事にヒット!
実はタイヤが通過する瞬間、ほんの少しタイヤ周辺の気流の乱れを感じました。
なので当たったかな?というのはすぐにわかりました。


スタッフ
このミッション達成のためには、多くのスタッフが必要でした。
エアショーチームスタッフに加えて、多数の地元の仲間の皆さんにご協力いただきはじめて可能となりました。

さらに、ゲストでいらしていた「岩城滉一」さんは、アクロバット機も飛ばす本当のパイロット!
「カンニング竹山」さんは、自宅に数百機のフィギュアがある大変な飛行機好きなのだとか!


このような皆さんに恵まれ、熱い「気」をいただいたおかげで、無事にこの難しく楽しいいミッションを成功する事ができました。
皆さま、ありがとうございました!

             
                   室屋義秀(むろやよしひで)

                   レッドブル・エアレース #31                            




<ファウストA.G.連載情報>

「大空の覇者へ~室屋義秀 レッドブル・エアレースチャンピオンへの挑戦」
Vol.14 突然訪れた2010ラストフライト レッドブル/エアレース第6戦ラウジッツ編が下記サイトでご覧いただけます。
http://www.faust-ag.jp/#!/master/cat91/vol14.php