2011年2月28日月曜日

操縦士道/その12 キャンパスライフ 2年目

グライダー・バイク・彼女とそろって、気分は完全にトムクルーズで、意気揚々と二回生に進級です。


航空部の活動も、一年目は天候不順などでほとんど飛べない悲惨な状況でしたが、それでもゆるゆると訓練は進んでいきます。
そして一年もたつと、教官が同乗しないソロフライト(単独飛行)ができる技量に近づいていきます。
こうなると同期のなかで、誰が一番にソロフライトに出るか?熾烈な争いが始まります。

教官が同乗し、全ての技量チェックを受けてOKとなると、晴れてソロフライトとなるわけですが、初期のソロフライトには気象条件や機材の状況など制限が多く、タイミングが合わないと実施できません。
ですから、早く単独飛行に出るか出ないかは、実は訓練の過程では大した問題では無いのです。

しかし当の学生には、ソロに出た順位こそが大問題です。
自分の技量も顧みずに、命がけで飛んで行く気がマンマンです(笑)。

そんな中、同期の一人が最初の単独飛行に出ました。
そして二人目、三人目とソロフライト。
そうこうしているうちにソロフライト出来ずに合宿が終了してしまいました。
ソロに出られなかった私は、次回の合宿まで同期から奴隷扱いです・・・・。


そんな中、心の拠りどころは“カノジョ”のはずでした。
っがしかし夏休みに海外に語学研修に出かける事になり、準備が忙しく慰めてもくれません。
そして憔悴したままの私を残して、海外へ行ってしまいました。

1ヶ月間、カノジョの帰国を待ちに待ち続け、ついに帰国。
ところが帰国したカノジョは何ともそっけありません。
すっかり恋心は冷めてしまっています。

突然の変化に対応出来ない私はパニック状態になり、海外には鬼のような魔物がいるに違いない!それがカノジョを狂わせた!と思うようになりました。
ちなみに、これまでの19年の人生で海外に行った経験は無いので、イメージは完全に桃太郎の世界を大真面目に思い描いています。

そんな中、逃げるカノジョを追いかけて中途半端な状態で過ごしていたある日、バイクで事故。
右折してきたトラックと衝突し、トラックの下に滑り込んだ私はそのままタイヤで踏まれました。
これで同情してもらえるかも?なんてアホな事を空想しても事態は悪化する一方。

そして、恋は終わりをつげました。


この時はあまりのショックに、地球の自転が止まってこのまま夜が明けなくなるかもしれない、っと大真面目に考えるほど落ち込みました。



でもそうなんです。今皆さんがアホか!っと思っているように、そんな事起こるわけありません。
しかし、当の本人はそう思いこんで、勝手に絶望の淵に立っています。


この世の不幸や幸せ、はたまた運命などというものは、全て心が作り出した幻想なのかもしれません。



なにはともあれ、これで空事以外する事が無くなりました。(勉強を忘れてますが・・)

そこで、まずは彼女を海外で変化させた“鬼”を退治に行く事を決意。
桃太郎になる事を決意したのです(笑)。



でもどうせ鬼退治に海外に行くなら、征伐の後に飛行機の免許もとってしまえ!ってな考えが芽生えました。
ならば航空大国アメリカに行ってみるか!という事で、鬼退治(アメリカ航空留学)プロジェクトが開始されたのです。
*ちなみにカノジョはアメリカに行ってません・・。


この事件こそが、その後の人生を未踏の大空へいざなう、大きなキーとなりました。
人生まさに「塞翁が馬」のようです。


                  つづく。
              
                   室屋義秀(44668/よしむろや)
                   レッドブル・エアレース #31  

2011年2月22日火曜日

操縦士道/その11 キャンパスライフ一年目

おはようございます。

私の経歴と今年の活動についてまとめたVTRができました。




さて前回、航空部での活動を様子を紹介しましたが、合宿中は訓練所から一歩も出ないので、訓練が終わっての“シャバ”(笑)での生活の楽しさといったらこれまた格別でした。
逆に、活動は合宿形式のため、それ以外の時は多少時間の余裕があります。

航空部での飛行料金が安いといっても、学生には大きな大きな負担です。
当然アルバイトをしないと続けていけません。
そこでまず始めたのが、早朝のコーヒーショップでのアルバイト。
朝に、ひと働きしてから通学です。

学校は女子70%の花園! 
授業の内容にかかわらず楽しいキャンパスライフが待っていますので、眠たい目をこすりつつも休むことなく通学です。
写真はイメージです。

しかし、学校の授業は高校時代の勉強不足がたたって、基本的に基礎から理解していません。 
 しかし恰好をつけて、“わかっているふり”をするためには、入念な予習と復習がかかせません。
さらに合宿のたびに授業を休むので、ついて行くのが精いっぱい。

なぜそんなに頑張ったかというと、クラスにとびきり可愛い子がいたからです。
当初よりアタックを繰り返すも相手にしてもらえず、これを何とかするべく勉強もがんばったのでした。
かなり苦しい勉強でしたが、これが後の英語を中心としたグローバルな活動にどれほど役に立っているかわかりません。

やはり、恋事に力を入れたのは正解だったのかもしれません(笑) 



この時期、グライダーとともに衝撃を受けた乗り物が、オートバイです。


ウルフ、という2ストロークエンジンのバイクに初めて乗った時に、その衝撃的な加速力に脳みそがしびれたのです。

当時の私には、まさに想像を絶する乗り物でした。




そしてすぐに免許を取得し、中古のVFR400というバイクを購入。

駐車代金などが高く、手が出なかった車に代わり、生活範囲・行動範囲を一気に広げてくれる事になりました。




そんなこんなをしていると、当然お金が足りなくなってきます。
朝のアルバイトでは足りなくなり、夕方のアルバイト、そして深夜アルバイトと徐々に生活がハードになっていくのでした。


そして一年生も終わろうかというころ、思いを寄せる子と奇跡的につき合うことに!
彼女・グライダー・バイクと、絶頂気分で進学していくのでした。
写真はイメージです。

しかし、これがその後の深い深い苦しみを生む要因となるとは、思いもしませんでした。



つづく。
              
                   室屋義秀(44668/よしむろや)
                   レッドブル・エアレース #31  

2011年2月19日土曜日

日刊スゴイ人

こんばんは。


先日「日刊スゴイ人」というウェブサイトに取材していただきました。
http://sugoihito.or.jp/


毎朝、日替わりで人物紹介を配信するウェブサイトで、毎日面白い方々が登場します。

2月22日(火)に登場させていただきますので、早めにご登録くださいませ!


                   室屋義秀(44668/よしむろや)
                   レッドブル・エアレース #31  







完全無料!日刊スゴい人!

日刊スゴい人!は完全無料で配信しています。
右の登録方法に沿って行っていただくだけで登録した翌日から無料で平日の朝7:30に毎日無料で配信いたします。
下記QRコードを携帯電話で読み込んでいただくだけで簡単に登録用のアドレスにメール送信することが可能です。

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                   室屋義秀(44668/よしむろや)
                   レッドブル・エアレース #31   

2011年2月16日水曜日

操縦士道/その10 航空部一年目

さて、いよいよ空事の開始です。

早速入部した航空部ですが、これは学校公認の体育会なのでサークル活動とは色合いが異なります。 
学校の代表として競技会などに参加して好成績を得るために、必要がある場合は公休をもらって授業を休むこともできるのですがその分活動は厳しいものがあります。
華やかなキャンパスライフを送る目論見は早くも忘れさられて、またまた体育会系の方向へ進んでいきます。

入部前に新入生向けの体験飛行会が開催されたので当然参加。
教官の操縦でいよいよ初飛行です。

初飛行は猛烈な感動でした。
ともかくそれまで抱いていたイメージよりも遥かに素晴らしい世界を体験でき、今後4年間の部活動がとても楽しみになってきました。


そしていよいよ入部しての初合宿。
このグライダーの訓練は、埼玉県熊谷近郊の利根川河川敷にある妻沼滑空場という学生グライダー専用の施設がありそこで行われるので、訓練は一週間の合宿形式で行われます。
朝日新聞に協賛いただき運営管理されるこの訓練所は、宿舎もあり格安での宿泊・食事も出来ます。
一週間の訓練で、飛んで泊まって食べて3~5万円と超格安です。
っがしかし、当然生活環境は最悪で、20畳ほど大部屋で共同生活、冷暖房無し、薄汚れたセンベイ布団、そして食事は精進料理に近いものがあります・・。

このような環境のなか、訓練は朝6時から開始され、日没まで休みなく続きます。
といっても飛ぶのは、一回5分で一日2回飛べればいいほう。それ以外の時間はひたすら整列して、着陸した機体を発航位置まで押し戻す作業が続きます。

しかしまだ飛べる日はましです。
私が1年生の時は、悪天候にたたられ飛べない日々が続きました。
滑走路は河川敷の草っぱらで、舗装などされていません。ですから、雨が降ると路面がぬかるみ、ある程度乾くまで飛べなくなります。
そこで早く訓練を開始するために、滑走路の水たまりを、大きなスポンジとバケツを持ってひたすら吸い取り捨てる作業を繰り返す必要があるのです。

 滑走路は、1500m×100mと巨大な場所。夏はまだいいですが、冬はただの精神修行です(笑)

さらにグライダーは、戦前には学校教育の一環として行われ、さらに初期のパイロット訓練にもなっていたので、その訓練方法は軍隊式でいまだに色濃く影響が残っています。・・・。
敬礼からはじまり実施する課目の報告まで、全て統一された方式で直立不動で行わなければなりません。

しかもこの時4年生部員が誰もいない特殊な状況で、ノウハウがうまく伝わっていないため運営効率が悪く、なかなか飛ぶ事もできない状況でした。


まあそんなわけで、こんなはずじゃなかった!っと初合宿で早くもいやになっていきます。
しかし、中学・高校時代の苦い経験がよみがえります。
今はひたすらにやるしかない!と考えられるようになっていたのは大きな成長でした。

先輩には絶対服従の体育会組織のなかで、ひたすらに耐える苦悩の一年目が過ぎていくのでした。


                    つづく。

                   室屋義秀(44668/よしむろや)
                   レッドブル・エアレース #31   

2011年2月3日木曜日

操縦士道/その9 飛行開始

おはようございます。


では、前回の続きから。

またもやギリギリでしたが、何とか滑り込んで始まった大学生活。
今回は中学、高校生活の失敗を繰り返さない!と入学と同時に目標設定をする事にしました。

充実した4年間を過ごすべく立てた目標は以下の2点。

  1.空事
  2.恋事

一つ根本的に間違っていたのが、勉強が抜けていた事。
これは時間が経てば経つほど後悔してしまいます。
何ともモッタイナイ・・・・・。


1.空事
それまでのサッカー人生に終止符を打って、いよいよパイロットへの道を歩む決意をしました。
幸い大学には、体育会の航空部というグライダーで飛行できるクラブがあり、学校の補助を受けて格安で飛行する事が出来る環境がありました。
金もコネも無い自分としては即入部。
いよいよ夢に見たパイロット人生がスタートします。



2.恋事
空を飛ぶ事と並んでの目標は、花のキャンパスライフ!
目指すは、今までの汗とホコリにまみれた体育会系生活からの華麗なる転身?
何とも単純ですが、当時は最優先課題だったりして。
しかし、この恋事がその後のパイロット人生に大きな転機を生むきっかけになるのでした。

 写真は本文とは関係ありません。


                   次回からいよいよフライト開始。
                                   つづく。

                   室屋義秀(44668/よしむろや)
                   レッドブル・エアレース #31