2011年2月16日水曜日

操縦士道/その10 航空部一年目

さて、いよいよ空事の開始です。

早速入部した航空部ですが、これは学校公認の体育会なのでサークル活動とは色合いが異なります。 
学校の代表として競技会などに参加して好成績を得るために、必要がある場合は公休をもらって授業を休むこともできるのですがその分活動は厳しいものがあります。
華やかなキャンパスライフを送る目論見は早くも忘れさられて、またまた体育会系の方向へ進んでいきます。

入部前に新入生向けの体験飛行会が開催されたので当然参加。
教官の操縦でいよいよ初飛行です。

初飛行は猛烈な感動でした。
ともかくそれまで抱いていたイメージよりも遥かに素晴らしい世界を体験でき、今後4年間の部活動がとても楽しみになってきました。


そしていよいよ入部しての初合宿。
このグライダーの訓練は、埼玉県熊谷近郊の利根川河川敷にある妻沼滑空場という学生グライダー専用の施設がありそこで行われるので、訓練は一週間の合宿形式で行われます。
朝日新聞に協賛いただき運営管理されるこの訓練所は、宿舎もあり格安での宿泊・食事も出来ます。
一週間の訓練で、飛んで泊まって食べて3~5万円と超格安です。
っがしかし、当然生活環境は最悪で、20畳ほど大部屋で共同生活、冷暖房無し、薄汚れたセンベイ布団、そして食事は精進料理に近いものがあります・・。

このような環境のなか、訓練は朝6時から開始され、日没まで休みなく続きます。
といっても飛ぶのは、一回5分で一日2回飛べればいいほう。それ以外の時間はひたすら整列して、着陸した機体を発航位置まで押し戻す作業が続きます。

しかしまだ飛べる日はましです。
私が1年生の時は、悪天候にたたられ飛べない日々が続きました。
滑走路は河川敷の草っぱらで、舗装などされていません。ですから、雨が降ると路面がぬかるみ、ある程度乾くまで飛べなくなります。
そこで早く訓練を開始するために、滑走路の水たまりを、大きなスポンジとバケツを持ってひたすら吸い取り捨てる作業を繰り返す必要があるのです。

 滑走路は、1500m×100mと巨大な場所。夏はまだいいですが、冬はただの精神修行です(笑)

さらにグライダーは、戦前には学校教育の一環として行われ、さらに初期のパイロット訓練にもなっていたので、その訓練方法は軍隊式でいまだに色濃く影響が残っています。・・・。
敬礼からはじまり実施する課目の報告まで、全て統一された方式で直立不動で行わなければなりません。

しかもこの時4年生部員が誰もいない特殊な状況で、ノウハウがうまく伝わっていないため運営効率が悪く、なかなか飛ぶ事もできない状況でした。


まあそんなわけで、こんなはずじゃなかった!っと初合宿で早くもいやになっていきます。
しかし、中学・高校時代の苦い経験がよみがえります。
今はひたすらにやるしかない!と考えられるようになっていたのは大きな成長でした。

先輩には絶対服従の体育会組織のなかで、ひたすらに耐える苦悩の一年目が過ぎていくのでした。


                    つづく。

                   室屋義秀(44668/よしむろや)
                   レッドブル・エアレース #31   

1 件のコメント:

  1. ご無沙汰しています。

    自分の作ったビデオを引用していただいて、嬉しいです。

    とうとう航空部時代に入りましたね。
    これからの展開も楽しみです。

    お体に気をつけて頑張ってください。

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